法人に、土地の譲渡などで一時的に多額な利益が実現した場合、この利益を将来に繰り延べ、将来の退職金や給与の手当てとして、企業内に留保できれば、これほど好都合なことはない。

法人税法では過去の税金を取り戻せる方法は繰り戻し還付という方法しかなく、これも前年度の法人税に対する還付のみで、カードは翌年度1回しか切れない。

したがって、課税の繰り延べは絶大な効果をもたらす。それに、今後法人税率は下がる傾向にあるからなおさらである。

課税の繰り延べの手法には、生命保険やレバレッジドリースを使うのが一般的である。リースを使う手法は昔からある。これは、法人が飛行機や傭船に共同出資し、その早期の減価償却費を使い、前半には法人に赤字を出させ、後半に利益を実現させる手法である。

過去では、こういった金融商品を扱う法人は大きなリース会社が殆どで、またその扱うロットも1口1億円以上と大きかったが、最近、中小企業向けの1口1000万円程度の小さいロットでも扱えるリース会社が登場してきた。これらの会社の業績は急激に伸び、東証1部まで上場を果たし、その株価も高値で安定している。

しかし、考えてみれば不思議なことである。政府や国税庁は、行き過ぎた節税や租税回避については厳しく取り締まっているのに、こういった節税のみを目的とする金融商品を認めており、またそれのみを販売している企業が東証一部の会社で株価もいい値段に落ち着いている。これはやはり不思議なことである。単なる課税の繰り延べと言ってしまえばそれまでだが、政府も、法人税を獲得するチャンスを先送りすることは得策ではないだろう。なんらかの政治的なカラクリがあるのかも知れないがそれは想像できない。

ようするに、課税公平といいながら、片手落ちのところがある。所得税、相続税、消費税はきついが、法人税は甘いということだろうか?

まあ、いずれにしても、われわれは税の仕組みを絶えず勉強し、何が節税で何が租税回避で何が脱税なのかをよく研究調査しておく必要がある。というのも、いつ何時、政府は税法を変更したり、通達を出したり、税法の解釈を変えたりしてくるか分からないからである。